「セラミック工具」と聞いたら、「欠ける」イメージがありませんか?
お茶碗と一緒で、落としたら欠けるんでしょ?とお考えのあなた。

今回は、そんな「欠ける」イメージのセラミック工具が、製造現場において大幅な「生産性UP」を実現できる2つの理由をご紹介します。

疑問:そもそもセラミックって何?お茶碗(陶器)と同じじゃないの?

答え:お茶碗(陶器)とはまったくの別物です。

違いは大きく3つ

① 原料が違う!

お茶碗(陶器)の主な原料は、粘土です。
一方、切削加工に使われるセラミック工具は、アルミナ(Al2O3)やジルコニア(ZrO2)といった、高硬度で化学的安定性を持った原料を元に作られます。これらは粘土に比べはるかに「硬い」原料で出来ています。

② 成型方法が違う!

お茶碗(陶器)は、人の手もしくは器具(ろくろ等)で成型されます。
一方、切削加工に使われるセラミック工具は、原料を専用の型に詰めた後、専用装置により 1㎠あたり約1~2トンもの強い力でプレスし、成型されます。
それにより、粒子間の隙間を埋め、「強度」のあるセラミック工具の素材が出来上がります。

③ 焼く温度が違う!

お茶碗(陶器)は、約900-1,300℃程度の比較的「低温」で焼成されます。
一方、切削加工で使われるセラミック工具は、1,500℃以上の「高温」で焼成されます。
また、焼く温度、焼く時間を厳密に管理することで、高品質かつ高性能なセラミック工具が作られます。

セラミック工具と、お茶碗(陶器)の違いがお分かり頂けましたでしょうか。
次に、そんなセラミック工具が鋳鉄や耐熱合金、高硬度材といった硬い金属を「高速」で切削加工できる理由をご紹介します。

セラミック工具が高速条件で加工することができる2つの理由

理由1. 熱くなっても、「軟らかくならない」
理由2. 熱くなっても、「割れない」

拡大します)各種工具材料の高温硬度

理由1. 熱くなっても、「軟らかくならない」

これはどういうことでしょうか?
左の表は切削加工時における工具刃先温度と工具材料の硬さを表しています。
金属は熱すると軟らかくなりますよね。切削工具も同様で、高速で加工すればするほど、ワークとの摩擦熱により刃先温度が上昇し、インサート硬度が低下していきます。つまり、軟らかくなっていきます。超硬合金やサーメットの硬度は温度 1,000℃時に、常温状態の約35%にまで低下してしまいます。

一方、セラミック工具(白セラHC1、黒セラHC2、窒化珪素SX6)は、刃先温度が上昇しても、超硬合金よりも硬度低下が小さい特性があります。特に、窒化珪素 SX6材質は、温度1,000℃時においても、常温状態の約73%の硬度を維持しています。超硬合金が軟らかくなるような刃先温度領域でも、硬度を維持することができるため、鋳鉄や耐熱合金の高速切削加工が可能なのです。


拡大します)各種工具材料の高温抗折強度

理由2. 熱くなっても、「割れない」

これはどういうことでしょうか?
左の表は、切削加工時における工具刃先温度と抗折強度を表しています。抗折強度とは、曲げに対する強さを言います。
超硬合金は、常温において強度が高く、割れにくい特長があります。
しかし、そんな超硬合金でも刃先温度が上昇すると、強度が低下し、温度1,200℃では常温比約35%にまで低下してしまいます。

一方、窒化珪素 SX6材質は、温度1,200℃領域でも、常温比約82%と強度低下が非常に小さいです。その為、セラミック工具は、超硬合金が割れるような切削温度領域でも安定した加工が可能になるのです。

高温領域で「硬くて」「強い」セラミック工具の特性を活かし、超硬工具を大幅に上回る生産性を実現した事例をご紹介します。
「耐熱合金」切削加工 で「15倍」能率UP、「鋳鉄」切削加工 で「3倍」を達成実現した事例です。

拡大します)


耐熱合金をサイアロンセラミック「SX9」で加工している様子です。 火花が大きく発生してますが、これは正常に加工されている状態です。
高速加工時においても硬さや強さを維持できるセラミック工具ならではですね。

セラミック工具 VS 超硬工具 スピードの比較動画

耐熱合金インコネル718
鋳鉄 FC200


セラミック工具が高速領域でも安定して加工できる理由が分かって頂けましたでしょうか。
高速切削加工が得意なセラミック工具を使って、「生産性UP」を実現しましょう。

 

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