前回コラム[ セラミック工具で「高速切削加工」ができる2つの理由 ] で紹介したように、
セラミック工具がどうやってつくられるかご存知ですか?

超硬工具のつくり方をご存知の方は多いと思いますが、セラミック工具のつくり方はご存知ですか?
今回は「意外と知らない?」かもしれない、セラミック工具のつくり方をご紹介します。

1. 調合工程

インサートの元となる生地をつくる工程です。大きく2つの工程から成ります。

①粉砕・混合工程

原料となる粉と水を混ぜてボールミル(粉砕機)で粉砕します。原料粒を細かく均質にすることで、後工程の焼成がしやすくなります。
硬くて強度のあるセラミック工具をつくるための重要な工程です。

②乾燥・造粒工程

①で作成した原料に高温の熱風を吹き付けます。そうすることで粒同士が合体して丸く大きくなります。
これにより後工程のプレスがしやすくなり、様々な形のセラミック工具をつくることができます。


2. プレス工程

press

前工程で作成した粉末から様々なインサート形状をつくる工程です。

専用の金型に粉末を詰め、高い圧力をかけインサート形状をつくります。
セラミック粉末を押し固める際にプレス(圧力)する力は 1〜2t /cm2にもなり、これは、インサートの上にカバが乗るのと同じくらいの力となります。
セラミックは超硬と比べ比重が軽いため、超硬と同じようにプレスすると、焼成後に、ヒビ割れやひずみが出てしまいます。そのため、セラミック工具専用に圧力のかけ方や、セラミック粉末の入れ方を調整してプレスします。
プレス後のインサートは、粉末を押し固めただけなので粒子間の隙間が大きく、手で簡単に折ることができます。
そこで次の焼成工程へと進みます。


3. 焼成工程

プレス後のインサートを高温で焼き固める工程です。

sintering

前工程で作成したプレス体(セラミック粉末の集合体)を加熱することで、セラミック粒子同士が互いにくっつき、粒子間の隙間が減少して焼き固まります。
高速加工にも十分耐えるセラミック工具をつくるには、超硬工具よりもきめ細かい焼成温度と時間の管理が必須になります。
この工程により、硬くて強度のあるセラミック工具が出来上がります。また、インサート成分の化学反応により、色が変化します。
焼結後のインサートは、インサート寸法、コーナーRがバラバラの為、形を仕上げる必要があります。そこで次の研磨工程へと進みます。

4. 研磨工程

焼結後のインサートを研磨し、インサート毎の寸法バラツキを最小限にすることで、安定した加工が可能になります。
セラミック工具の研磨は、下記一連の工程で行います。

刃先処理研磨工程イメージ図
  • インサートの上下面と外周を研磨することで、インサート毎の厚みや幅の大きさを揃えます。
    これにより、インサートコーナを変えても、常に同じ刃先の位置で加工できるため、安定した加工が可能になります。
  • 耐熱合金や圧延ロール加工用に、NTKではインサート受け部をV字形にし、クランプ剛性を高めたホルダをラインナップしています。
    インサートのV字形状は平面研磨工程でつくられます。
  • インサートの刃先強度を上げる為、刃先に角度チャンファやホーニングを施します。
  • それぞれの加工に最適な刃先処理のセラミック工具を使うことで、更なる安定加工が可能となります。

5. コーティング(一部)

鋳鉄を高速加工すると刃先温度上昇により、摩耗が進行しやすくなる場合があります。
コーティングを施すことで摩耗進行を抑え、工具寿命の向上に効果があります。

coating

NTKでは一部の鋳鉄加工用セラミック工具にCVDコーティング材質を設定しています。
超硬工具でも用いられるCVDコートですが、コート成分・配合をセラミック工具専用のものにカスタマイズしています。

今回は、一から学ぶセラミック工具のつくり方をご紹介しました。
 

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